《ガラスの中で》が再演されました
このサイトの記事の主な目的は、私の活動の告知ではあるものの、自分の作曲の記録としても機能します。つまり半分は自分のために書いている感じです。なのでいつ何の曲が演奏されたのかはこのサイトを見ればわかるので、たとえ直前のコンサートでもできるだけ書くようにしているのですが、今回はすっかり抜けてしまいました。
先週3月1日に、私とピアニストの中村和枝さんによる二人組ユニット「クラヴィアーレア」の公演がおよそ7年ぶりに行われ、2010年に書いた《ガラスの中で》というピアノ曲が再演されました。この曲は過去のクラヴィアーレアで初演されたものですが、あまりにも弾きにくい箇所があり、今回少し改訂して再演していただきました。
ところでサイトに書き忘れた理由です。自分がコンサートを企画するときには運営のことばかり考えてしまって、自分の曲のことが疎かになってしまいます。自作個展ならともかく、他の方の曲もあるためそれらに気を配る必要があるし、プログラムを作ったり当日の受付や記録や運営等を自分で動かなくてはならず、その下準備も結構大変なものです。これはコンサートの企画・運営をする人ならば「うんうん」と分かってくれると思います。そういうことで自分の曲のことをここで告知するということをすっかり忘れてしまいました。


先にも書いたように、このサイトは自分用のアーカイヴでもあるので、いまさらこうして書いているのですが、せっかくなのでこの曲にまつわる話を少し書きます。
初演されたのは「claviarea 9 素晴らしき個人様式の世界」という公演で、2011年3月28日でしたが、その17日前にあの東日本大震災が起こりました。様々な悲惨なニュースが届き、原発が爆発して計画停電となるなど、社会が混乱しインフラが危うくなると、コンサートどころではなくなるのも当然で、軒並み中止や延期となりました。私は当時、インターネットで現代音楽を含むコンサートの情報を集めた「現代音楽コンサート情報」というメールマガジンを毎月発行していたのですが、大地震もパンデミックもまだそれほど身近ではなく、来日音楽家が大病になった、くらいのことでもない限りコンサートが中止になるということは普通起こらない時代でした。私は当時既に名古屋にいたため自分自身が直接震災の被害に遭うことはなかったので、地震によって自分が送信したメールマガジンに載せた多くのコンサートがどうなるのか、中止や延期はどれくらいあるのだろうかと調べて速報を出すことにしました。
(当時配信したメールマガジン)
このメールマガジンは情報発信のみに徹していたため本当に「情報」しか載っていない何の色気もないものでしたが、当時私が把握していたコンサートの主催者に片っ端からメールを送り、開催の有無を確認し、原発鬱になりながら(しんどくなって部屋にうずくまって、をくり返していました)必死で編集していたのを思い出します。
そんな中、自分達が企画しているクラヴィアーレアの開催予定日は3月28日。実施するのか中止するのか、相方の中村和枝さんと何度も相談した記憶があります。彼女は揺れが続く東京に住んでいたため、私の環境よりずっと過酷だったはずで、先週もあの当時のことを思い出しながら「開催するのか分からない中で揺れながら練習するのが大変だった」と話していました。作曲家はとっくに書き上げていたぶん全然マシですが、演奏家は本番に向けてモチベーションを繋がなくてはならない立場であり、その中で私と「開催か中止か」を相談すること自体がとても辛かったことは想像できます。

多くのコンサートが中止になる中、幸いクラヴィアーレアは震災より2週間経って少し落ち着いた時期になる、ということと、多くのコンサートがなくなってしまうという状況の中で、聴きに来られるお客さんがどれだけいるかわからなくても、コンサートを稼働するということ自体に意味があると考え、決行することにしました。幸い演奏者が一人、運営も一人という小さいユニットだったのも開催することができた理由かもしれません。開催を決めたことを評論家の石塚潤一さんがネットでわざわざ周知してくださったのはとても嬉しかった思い出です。

いま当時の記録を見たら、この公演には90人以上の方が聴きに来られてました。震災の余韻が覚めやらぬ中で開催できて良かったと、いまでもしみじみ思います。
以上、もう15年も前の、《ガラスの中で》にまつわる思い出話です。
