claviareaで《ヘミオラ・スリップ》を再演
Hemiola Slip for tpy piano will be performed at the concert called “claviarea 14” (August 4th, 2018, Tokyo) by Kazue Nakamura.
ピアノは弦をハンマーで叩くのに対して、トイピアノは中に仕込まれている「鉄琴」を叩いて音を出すので、あのような音が出ます。そしてこのピアノに似ても似つかぬ楽器が近年、一部のピアニストたちのレギュラーな楽器となりつつあります。2002年以降、私とユニット活動「クラヴィアーレア」を組みコンサートを企画開催しているピアニストの中村和枝さんは、最近特にトイピアノへの傾倒が強く、これまでの公演でも一部にトイピアノが登場することはあったものの、ついに今回の公演は「オール・トイピアノ作品」のプログラムとなり、ついでに「オール邦人作品」となってしまいました。そのためか、めでたく「サントリー芸術財団推薦コンサート」となったのは有り難い話です。
「claviarea 14 コンテンポラリー・トイピアニズム 〜大人たちの本気の遊び」
日時:2018年8月4日(土)、開演14:00・開場13:30
場所:東京オペラシティ・近江楽堂
■プログラム
・松平頼暁 ABZ~複数のトイピアノとヴォイスのための(委嘱新作初演)
・平石博一 ビヨンド・ザ・ミラー(委嘱新作初演)
・近藤譲 カッチャ(日本初演)
・山本裕之 ヘミオラ・スリップ
・成本理香 ラインズ
・山根明季子 マジカル・メディカル・トランキライザー (共演:村田厚生・ブスチック・トロンボーン)
・山口恭子 砂糖の雨(日本初演)
・近藤浩平 坊さんの気晴らし
・田口和行 星屑
※演奏順未定
本公演の面白いところは、トイピアノを7台使用するということです(チラシには5台と書かれていますが、その後増えました)。トイピアノはメーカーあるいは型式によって音色がかなり違いますから、各社がどのような姿勢で楽器を作っているかとか、作曲家はその楽器の何に注目しているのかとか、ピアニストの曲に対する解釈がどのように楽器の選択に反映しているかとか、これだけとってもかなり興味深い聴き方が可能です。
プログラムの多くは(すべてではありませんが)中村氏のために書かれた曲ですが、私の曲《ヘミオラ・スリップ》も2016年に行われた名古屋での彼女のコンサートのために書き下ろしたものです。「ヘミオラ」というのは通常は2:3のリズム構造のことを意味しますが、この比例から「完全5度音程」を表すこともあります。私が想定した楽器が5度上の倍音がかなり強かったため、この音程とその変位形を多用してあります。従来「モノディ」と称して単旋律を基本に書いてきましたが、この曲をきっかけにようやく「縦の響き」も積極的に用いようという気になった、そんな曲です。
コンサート自体のインフォメーションはclaviareaのサイトを御覧ください。ちなみにチラシデザインは私の担当です。