《中継のエレキギター》再演
Electric guitar the Relay for electric guitar will be performed by Gaku Yamada, on 5th December, 2019, at Tokyo Opera City (Recital Hall).
《中継の〜》は、2000年頃に主に書いていたシリーズで、その頃興味のあった楽器音の「裏の音」(と勝手に自分で呼んでいた)を電気増幅を使って表に引っ張り出そうとした作品群です。たとえばピアノの鍵盤を一つ叩くとその瞬間に「コツン」という音が鳴りますが、普段はそのような音は意識されない。しかし注意深く聴くとそれは必ず鳴っていて、またそれがピアノのいわゆる打鍵音の重要な要素になっているわけです。そしてそのような「裏の音」はどの楽器にもあって、当時の私はそれを弦楽器やサックスなどで試していたのですが、2015年にほぼ15年ぶりぐらいにエレキギターで再挑戦してみました。
もともとギターの音の何に興味があったかというと、実は、左手がフレット上で擦れる音や、指が弦に軽く引っかかって出す「ぴきっ」というノイズなどでした。そういうギターの「よけいな」ノイズを「中継」しようというのが本作です。お気づきかと思いますが、これらのノイズはもはや楽器本来の「裏の音」とは成り立ちが違うわけですから、そのあたりは15年の歳月の間に趣旨がずれたという程度にお受け取りくだされば幸いです。
初演は「ニンフェアール」という作曲家の伊藤美由紀さんが名古屋で毎年主催している公演シリーズで、その年は佐藤紀雄さんがフィーチャーされ、テーマがまさに「エレキギター」でした。そもそもエレキギターは(これもいちいち書くほどのことではありませんが)コイルの振動をピックアップして電気増幅するという仕組みの電気楽器ですが、この曲ではそのような音も使いながらも主役の音はコイルを通さない弦の生音で、楽器にマイクを近づけて増幅する極めてプリミティヴな手法を使ってノイズを拾おうとしています。今回は山田岳さんがどのようなノイズを作りだしてくださるのか、とても楽しみです。
ペガサス・コンサート・シリーズ 山田岳エレクトリック・ギター・リサイタル
「独奏楽器としてのエレクトリック・ギター そしてその可能性をめぐって」
12月05日 19:00
東京オペラシティ リサイタルホール
モートン・フェルドマン/The possibility of new work for electric guitar
スティーヴ・ライヒ/エレクトリック・カウンターポイント
湯浅譲二/死者の驕り エレクトリック・ギターのためのプロジェクション
松平頼暁/オスティナーティ
山本裕之/中継のエレキギター
フォルカー・ハイン/なぜ、いま、(日本初演)
川島素晴/新作(初演)
主催:NPO法人 日本現代音楽協会