《賢治祭》が再演されます

演奏|Performance

Kenji-sai for vocal ensemble, will be performed on March 5 in Tokyo by Ryuta Nishikawa (cond.) and Voxmana.

《賢治祭》、なんと16年ぶりの再演です。

つどつど曲を書かせていただいているヴォクスマーナからの初の委嘱作品、またそれまでほとんど声楽曲を書いてこなかった私にとっての、声楽ジャンルの扉を開くきっかけとなった曲でもあります。

テキストは俵万智の11の短歌です。とてもポピュラリティが高いこの歌人のテキストを使ったのは、耳で聞いて何を言っているのか、その言葉が聴き取りやすいと思ったからです。とはいえ、この作品における私の興味は、短歌の内容を音楽で表現したかったということではまったくなく、コトバが音楽の中でどのように聞こえるか、そのコントロールはどのように工夫できるのか、コトバの子音と母音は分解できるのかなど、むしろコトバそのものと音楽との関係でした。声楽曲においてテキストの意味内容ではなくコトバ自体をどう扱うかというスタンスは最近まで続いていたので、その原点といえる作品です。

実はこれを書いていた時期には、偶然にも「創る会」という別の合唱団から同時に委嘱を受けており、《労労亭の歌》という曲も並行して書いていたのですが、こちらは李白の漢詩の読み下し分をテキストに使っていました。漢詩は聴いてわかりにくいコトバなので、俵万智とはまったく反対の性質を持っています。このように元のテキストのコトバが聞き取りやすいものと聞き取りにくいものを同時に扱っていると、そのこと自体が書法に影響を与えることに気づきました。たとえば《労労亭》の方は自然と音を器楽的に扱うことになりますが、《賢治祭》はあまりそういうふうにはなりません。

ともあれ、それは書く側の問題ではありますが、そういったことを考慮のうえで聴いていただいた方が、当時のヤマモトがいかにコトバに四苦八苦していたのかがおわかりいただけ、それを聴き解くのも一興かと存じます⋯⋯。

ヴォクスマーナ第43回定期演奏会

2020年3月5日(木)19:00開演
豊洲シビックセンターホール

田中吉史(b.1968)/ 歌声、発話、正弦波(委嘱新作・初演)
稲森安太己(b.1978)/ Ebene Minne (委嘱新作・初演)
山本裕之(b.1967)/ 賢治祭(2004委嘱作品・再演) 短歌:俵万智
鈴木純明(b.1970)/「Susanne un jour シュザンヌはある日」pour 12 voix mixtes(2015委嘱作品・再演)
伊左治直(b.1968)/ 面影のほとりに(アンコールピース19委嘱新作・初演) 詩:新美桂子