[境界概念]作品について④《ダンシング・オン・ザ・スレッショルド》
今年の4月に北嶋愛季さんによって初演されたチェロ独奏曲で、タイトルは「しきいの踊り」という意味です。「しきい」というのは「閾」あるいは「敷居」のこと、つまり「境」を意味しますので、今回の個展のテーマにピッタリなのです。
この曲がどのような曲なのかというのは初演告知の記事に書きましたのでそちらをごらんいただければと思います。ここでは4分音のことを書きます。
調弦は山本お決まりの「一部の弦を4分音ずらす」やつです。上の画像の左のような指定をしています。そしてII弦の第3倍音(つまりAの4分音フラット)とI弦の第2倍音(Aナチュラル)を同時に指定すると、4分音衝突を作ることができます。楽譜の「cello」と書かれた大譜表が「弾き方」で、上段が「結果音(suono reale))」です。
これはもちろん一例で、四分音衝突は自然倍音と開放弦のみでこのように作るため、使える音は限定的になります。限定的というのが実はミソで、いうなれば「使える四分音衝突」を音列音という風に考えると、ある種旋法的な偏りのある響きを持った音楽になります。
生で聴くと、音の歪みが震えるのをダイレクトに感じていただけると思います。
ちなみにこの曲はBabelScoresより出版されています。