[境界概念]作品について⑦《シュリーレン聴取法》

7曲目のコメントは、本公演で最も大きい七人編成、《シュリーレン聴取法》です。

《水平線を拡大する》が四分音を横の方向に流れる「線」にぶつける曲とすると、この曲は縦の方向に四分音が積まれます。《水平線〜》と対になる立場ですが、もちろんそのようにはじめから考えていました。

以前は『核』を設定した「モノディ」(と私が勝手に呼んでいる方法論)で線的な音楽ばかりを書いていましたが、ここ数年は和音も考えるようになりました。基音から第3倍音まで積み重ねた音ですが、それだとただの完全協和音なので、一部の音を上下に半音ばかりずらして、それにより和音のバラエティを作っています。今回の曲にもその響きが随所に現れます。

もう一つ私が最近興味があるのは、調的な和音です。いわゆる「属七」とか「短三」とかの響きです。昔の音楽ではこれに「機能(役割)」を与えることによって音楽が進行する、という機能和声が理論の中心となっていました。この曲ではこれらの和音から機能性を排除して(その方法論は企業秘密)「ただの調的な和音」として扱っています。

このように倍音による和音と調的な和音を《シュリーレン聴取法》では曲の構成に応じて使い分けています。そしてこれらの和音の一部の構成音には四分音をぶつけます。「縦方向に四分音を導入している」というのはこういうことです。そしてこれだけ分厚い響きを中心とした曲を書いたのは、私にとってここ20年ほどの中では初めてだと思います(他の多くの作曲家から見たら全然厚くないのですが)。

さて、いよいよ本番まで1週間となりました。既にリハーサルも始まっています。とにかく演奏者が皆さん素晴らしい。それだけでも聴く価値があります。

ご予約お待ちしております。https://boundaryconcepts.peatix.com/
(当日は500円増です)

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