弦楽オーケストラ《迷宮和声》が初演されます@チリ
チリにOrquesta Marga Margaという弦楽オーケストラがあるのですが、南米でも屈指の先進的なプログラムを組むグループなんだそうです。今月下旬に「プエンテ・フェスティバル ― 文化の海洋間交流」という毎年行われているフェスティヴァルが首都サンティアゴに近い海辺の街(の複数箇所)で開催される予定で、私の新作《迷宮和声》(Harmonia Labyrinthi)が演奏される予定です。
私が近年弦楽器を用いる場合は、通常調弦と4分音調律のグループに分けて、私がよくやる「四分音衝突」を発生させて曲を書くのですが、この曲でもご多分に漏れずそれをしています。ただ弦楽オケの人数が多くないため(4.4.3.2.1)、どちらかというと弦楽アンサンブルの組み合わせみたいな感じになります。たとえばチェロは二人しかないので、通常調弦と4分音調律が一人ずつ、という具合です。
新作の《迷宮和声》というタイトルですが、ここ数年用いている「機能を排除した調的和音」を主役としていることにちなみます。古典的な機能和声では、導音などの「ここに行くはず」という機能音が存在することによって、音楽の進行を牽引していますが、調的な和音を使いながら、本来そのような音が「行くべきところに行かない」ように操作することによって、予測不能、あるいは違和感のある和声連結(それを「和声」と言って良いかどうか)が作られます。そうすると当然ながら、調性音楽のような機能和声的な牽引力を持たなくなるので、調的和音を持ちながらも音楽の原動力が、たとえばリズムとかテンポとか音型など他の要素に依存配置を換えることなる、と考えています。
「音や音楽の曖昧性」という長年の自身のコンセプトは、もちろんここに4分音を組み合わせる事で強化されます。特に和音の中に短2度音程がある場合、その間に4分音を挟むと、より和音構成音の所属が曖昧になり、歪みもひとしお、という感じになるので面白いです。
さて、コンサートの全容ですが、私の作品は9月26日に演奏されると招待状に書かれているのに、Orquesta Marga Marga のfacebookページではフェスティヴァルが「9月21日〜25日」となっている上に、あと2週間というのに詳細なプログラムがどこにも見当たりません。「本当にやるのか?」と不安になりますが、これも海外あるあるでしょう、最終的にはどうにかやるもんだと思っています。

チリでは最近右派が政権を握り、このフェスティヴァルの運営資金も大きくカットされているという噂です。極端なイデオロギーは文化を確実に破壊します。日本も同様なことが起きているのは推して知るべし。
そんな中でも、とりあえず私自身は現地に飛ぶ予定です。フライトは片道三十数時間かかりますが、初めての南米、しかもわりとリゾートっぽい雰囲気のエリアのようで、楽しみです。
【追記】
facebookでコンサートスケジュールを見つけました。やはり9月25日でした。
9月22日にはカザフスタン特集があるそうです。チリでカザフスタンと会う貴重な機会になりそうです。21日には今回のコンサートをコーディネートしてくれた友人の作曲家Andrián Pertoutが出演する「アートと科学:直感と理性」というイベントもあるようです。そして24日はジャズです。なかなか幅が広い。

